子ども用の包丁選び

うちの味Labo.では基本的に教室の包丁を使っていただきますが、家でのお手伝いや教室のおさらいなどで、お子さんの包丁の購入を考えてらっしゃる方も多いと思います。
今日はそのお話です。

本当に子ども用包丁は必要か

まず、どんな包丁を買うかの前に、本当に購入が必要なのか、実際に家にある包丁をお子さんに持たせていくつか切らせてみることをおススメします。子どもの手の大きさや握る力は個人差がとても大きく、低学年でもステンレスの軽いもので刃渡り14㎝くらいの大人の包丁なら、しっかり持てる子もいます。
正直、1年くらいお教室に通っているお子さんは、小学校低学年でも子供用包丁では物足りなくなる場合もあります。子ども用包丁では硬いものや大きいものを切るのには頼りなくなってくるからです。小学校4年生くらいには、食材によっては私の鋼の包丁を使ってもらうこともあるくらいです。

ただし、その際に使うのは「三徳包丁」です。肉・魚を切りやすいように先がとがり、野菜を切りやすいように葉先から緩やかにカーブ、手元が幅広になっています。なによりこの形状は、手前から向こうへ「押し切り」を主とする日本風の切り方にマッチしています。
小さな手には果物ナイフやペティナイの方が向いていると思われがちですが、これらは「剥く」あるいは「握り込んで押す」もしくは西洋で主の「引き切り」に向いたものなので、力の入れ方が違うのです。

右手を上から包丁にのせ、人差し指をつば(刃が柄についているところ)にひっかける様にして刃を親指と挟みこむように握らせます。この二本の指だけで支えて持てるかどうかがチェックポイントです。これでしっかり刃を支えることができる場合は多少刃渡りや柄が長そうでも使えます。ただ、残りの三本の指で添える程度に柄を握った時、手に対して柄が太すぎる場合は持ちにくく感じます。端野菜などを少し切らせてみて、握る位置をすぐに変えたがったり、すぐ「疲れたー!」と口にするようでしたら、やはり大きすぎあるいは重たすぎなので、子ども用の包丁購入を検討するといいと思います。

また、左手(食材をおさえる手)指の関節に包丁の刃を付けるようにして切るのは、子どもにはちょっとした恐怖感があります。特に大人の包丁は身幅(刃の幅)が広いので、最初は怖がるお子さんも多いです怖いからと刃から左手が遠くなるほどケガにつながります。そういう意味でいうと調理に慣れるまでの短期間であっても子供用包丁を使う意味は大いにあると思います。お教室でも、一緒にやる時はできるけれども、一人でやっている内に左手と刃が離れてしまう様子が見受けられるお子さんは、慣れるまでできるだけ子ども包丁を使わせるようにしています。

逆に、子ども用の包丁を長く使っていて、気づくと子どもの手が大きくなっていたということもあります。三徳包丁であれば手に対して包丁が小さい分には大きな問題ではないのですが、親指と人差し指の握りがつばからかなり離れた位置で柄を持つ様子がみられるようですと、柄が比較的短いものが多い子ども用包丁ではかなり使いにくくなっているはずです。子ども包丁を卒業させてあげましょう。

包丁の真上から刃の付け根をつかませる
①人差し指をつばにひっかける
②親指で挟み込む
③二本の指だけで包丁を支えられるか

おすすめの子ども用包丁

コープ調理室でボランティア教室をやっていた時には、一度に多くの人数が来ていましたので、基本毎回My包丁を持参いただいていました。色んな年齢で入会がある会でしたので、すでに子ども用のMy包丁を買って持っているという子も多かったです。
その時の経験から、おススメするのは「ステンレスの三徳包丁で、刃がギザギザしていないもの」です。

一番最初の包丁は、手を切るのを心配してギザギザの包丁を購入する方が多いのですが、前後に動かさないと切れず、切れ味も一般的な包丁に比べて劣ります。切れない包丁で料理をすると●余分な力がいる ●時間がかかる ●見栄えが悪くなる ●切り方に変なクセがつくなどと、良いことがありません。また「My包丁」が嬉しいお子さんは長く使いがちですが、この包丁は研ぐことができないのです。

また、子ども達は大人が思っているよりも慎重です。15年やってきて、怪我が全くなかったというのは嘘になりますが、ザックリ切ってしまったという子は一人もいませんでしたし、9割の子が一度怪我をすると二度としなくなります。
※残りの1割は研ぎすぎの包丁の問題が原因です。包丁のお手入れ方法などについては、また別の機会に書きますね。

お手入れのしやすさ(研ぎやすい)や軽さ、清潔さ(さびにくい)などから多くの子ども用包丁はステンレス製です。セラミックの包丁も軽くて錆びず、よく切れますが、研ぐのにダイアモンドシャープナーが必要です。また、固いものをきると刃が欠けやすいというのもあります。

左利き包丁?

包丁には両刃包丁と片刃包丁と言って、刃が左右対称についているものと、片側が平らで片側に傾斜がついているものがあります。片刃包丁の場合は完全に右利き、左利きと分けられますが、三徳包丁はじめ両刃の包丁は基本的に左右どちらでも使えることになっています。

でも厳密には、右利きの人の使い易さに寄った刃付けになっていることが多いのだそうです。だから、両刃の包丁でも左利き用が用意されている場合は、それを使った方がより使い易いということだそうです。ただし数が少ない分職人さんが作るのに慣れておらず時間がかかるということで、値段が高いものが多いのだとか。

子ども用包丁ではサンクラフトというメーカーから左手用が出ており、気にされる方は値段も左右変わらないのでお勧めです。以前のお教室でも毎年一人は左利きの子がいましたが、全員この左利き用の包丁を持参されてました。(ちなみに右手用のサンクラフトもおススメです)。ファースト包丁として子ども用に買ってあげようと思うと、左利き用を探すのが親心といったところでしょう。

と言いつつ、実はうちの味Labo.では左利き用包丁をご用意していません。私自身は右利きなので、使用感がどこまで違うのか本当のところは分かりませんが、毎年のように左利きのお子さんはおられますが、両刃の包丁である限り、左利き用でなくとも切りにくそうな感じはまったく受けないからです。また左利き用であっても、研いで使っている内に結局微妙に変わってしまうと思うのです。
学校やキャンプなどで戸惑わないように、「両刃の包丁なら左利き用でなくても使える」ということを教えてあげておくことも大切だと思います。